ひとりひとりのプレイヤーが目まぐるしくコート上を走り回り、パスをつないだり、ドリブルで切り込んでシュートを決めるバスケットボール。その中で、コート上の5人が卓越したチームプレーを行うため、それぞれに「ポジション」が割り振られているのはご存知でしょうか?
このテキストでは、バスケットボールにおける試合中の「役割」=「ポジション」を解説して参ります。
- ポジションごとの役割を学べます
- ポジションごとの名前の由来を知ることができます
- 育成年代の指導者が考えるべきポジションについてお伝えしています
- あなたに適したポジションが見つかるかもしれません
ポジションとは「役割」のことを指す
このテキストでお伝えするポジションとは、コート上でプレーする5人がどのような共通認識を持ってプレーすれば良いのか?ということを明確にするためのコート内での「役割」を指します。
また、バスケットボールを観戦する際には、各プレイヤーにポジションが設定されていた方が選手の特徴を理解しやすく、感情移入もしやすいことでしょう。指導者やリクルーターからしても、選手を評価する際に与えられたポジションでの活躍ぶりをみて検討することができます。
つまり、ポジションが振り分けられていることは、選手だけではなくすべてのサポーターにとっても「基準」となるのです。
チーム内でのポジションの決定は、5人の身長やプレースタイルが大きく関わってきます。
ポジションの種類とその役割
ポジションは大きく分けると3つあり、その中でも細かな役割や得意とするプレーなどに応じて名称が分かれます。ひとつずつ見ていきましょう。
G(ガード)
ガードポジションには、ポイントガードとシューティングガードの2つの役割があります。いずれの役割もバックコートからボール運びやパスの配給などを行いますが、それぞれに特徴があります。
PG(ポイントガード)
ポイントガードは「コート上の監督」とも言われる重要なポジションで、各プレイヤーが持つ力を存分に引き出すリーダーシップを発揮し、監督が求めることをコート上で表現しながら、チームを勝利へ導く力のある選手が務める役割です。
ポイントガードを任される優秀な選手は、高いバスケットボールIQ、高いハンドリングスキルとシュートスキルに加え、パッションを持ち合わせています。また、声によるリーダーシップを発揮し、正確でシンプルなパスを心掛け、シュートファーストプレイヤーではない視野の広さを持ちます。普段から監督やコーチの関係性を築くことが上手であることも特徴のひとつです。
SG(シューティングガード)
シューティングガードは、外角のシュート(3ポイントシュートなど)を得意とし、ディフェンスがチェックに出てきた時はドライブやパスもできる選手が務めます。ポイントガードの代わりとなってバックコートからボールを運んだり、パスの配給を行います。
本来、シューティングガードとしてプレーしている選手が、ガードの不在や交代によってポイントガードを任されることはチームでは多々あります。
そのため、ハンドリングスキルやパススキルにも長けている必要があります。
F(フォワード)
フォワードポジションは、スモールフォワードとパワーフォワードの2つの役割があります。いずれも「オールラウンダー」と呼べるポジションですが、それぞれに特徴があります。
SF(スモールフォワード)
スモールフォワードは、コートのどこからでも1on1を仕掛けることができるオールラウンダーで、3ポイントシュートを打つこともできれば、ペイントエリア内で得点することもできます。
また、選手の起用によってはシューティングガードや、パワーフォワードにコンバートされてもすぐに対応できる柔軟性を持ち合わせていることも特徴です。
PF(パワーフォワード)
パワーフォワードは、外角を打つことも求められますが、主にミドルレンジからのアタックやゴール下でのシュートを得意とします。そのため、リバウンドを得る機会も多く、スモールフォワードの選手よりもフィジカルが強靭な選手が担当することが多くなっています。
C(センター)
チームの中で最も高身長の選手が務めることの多いのがセンターです。主にペイントエリア周辺のインサイドでプレーする選手を指します。アウトサイドからのパスをインサイドで受け、再度アウトサイドへアシストのパスを送ったり、相手ディフェンスを背中にしてゴールに押し込みスコアするなど「ポストプレー」を得意とし、チームの大黒柱としての役割を果たします。
また、オンボールスクリーンではアウトサイドプレイヤーとのピック&ロールで、インサイドへ向かってリムランするなど、高身長を活かしたプレーで加点したり、チームメイトの得点をお膳立てすることができます。
ディフェンスでは、ゴールを守る最後の砦として、オフェンスのレイアップシュートなどをブロックショットしたり、リバウンドを奪取したりと「リムプロテクター」として活躍します。
ポジション名の由来
ポジションの名前にはそれぞれ由来があります。バスケ経験者でも、これまで何となくそういうものかと思って呼んでいた方は多いのではないでしょうか?ここでは、ポジション名の由来について解説していきます。
ガードの名前の由来
ガードは、英語でGuardと綴ります。Guardは「守る」「防御」「護衛」などの意味があります。
バスケットボールが始まってから120年以上が経ちますが、その昔、ガードは自チームのゴール付近にポジションをとり、攻めてくるフォワードの攻撃を防ぐ役割をしていたそうです。
今では司令塔としての役割として認知されているガードですが、驚きの由来があったのですね。
フォワードの名前の由来
フォワードは、英語でForwardと綴ります。Forwardは「前方へ」「前へ」「先へ」などの意味があります。
こちらの名前の由来もガードと同様、昔のバスケットボールはポジションで担当するエリアがある程度決まっていたそうです。相手チームのゴール付近にポジションをとり、得点を獲る役割をしていました。
サッカーはコートが非常に広大なため、現代でも担当エリアがある程度決まっていますよね。サッカーにおいてもフォワードは前線で得点シーンに絡むことが多いポジションです。バスケットボールでもかつては同じような戦術で行われていたということになります。
センターの名前の由来
センターの英語でCenterと綴ります。Centerは「中央」「中心」などの意味があります。
バスケットボールが始まってから1937年まで、現代のサッカーのルールと同様、バスケットボールでも得点が入るたびにセンターサークルからジャンプボールを行っていたそうです。
ジャンプボールを制することのできるチームの方が有利となるため、高身長の選手がジャンプボールを担当していました。ジャンプボールは、コートの中心部分で行われていたため、それを担当する選手がセンターというポジション名で呼ばれていました。
へぇ~!ポジション名って、そんな由来があったんだね。知らなかったよ!
バスケットボールの歴史を知ることも、プレイヤーとしては大切かもしれませんね。
番号で呼ぶこともある
ポジション(役割)は、番号で呼ぶこともあります。ここで言う番号は背番号を指すものではありません。バスケットボールの試合において出場できる人数の5人の内、1番から5番までが番号で割り当てられます。
1番
ポイントガードのことを指します。常にゲームをコントロールし、チームリーダーとなります。ポイントガードが決まっていないチームも中にはあり、1番と2番でツーガードとなる場合もあります。
映画スラムダンクの主人公「宮城リョータ」は湘北高校バスケットボール部のスターティング5で、ポイントガードを務めます。タイトルになった「THE FIRST SLAMDUNK」の”FIRST”は宮城リョータのポジション「1番」にも由来しているのでは?とも考えられます。(勝手な想像ですが)
2番
シューティングガードのことを指します。外角のシュート(3ポイントシュートなど)を得意とし、ディフェンスがチェックに出てきた時はドライブもできる“エースナンバー”です。
また、ポイントガードの代わりとなってバックコートからボールを運んだり、パスの配給を行います。
NBA選手でシューティングガードと言えば、”バスケットボールの神様”マイケル・ジョーダン選手や、コービー・ブライアント選手などレジェンドの名前が挙げられます。
また、歴代最高のシューターとしてNBAで数々の記録を持つステフィン・カリー選手は、ポイントガードとシューティングガードの両方を熟します。そんなカリー選手が、「どのポジションでプレーするかは本当に重要ではない。バスケットボールをプレーできるかどうかだ」という発言をしています。昨今のバスケットボールはまさにそのようなチームが多く、センターであっても3ポイントシュートが上手な選手が非常に多くなっています。近い将来、ポジションの概念は無くなっているかもしれません。
スラムダンクでは、湘北のシューティングガードは三井寿が務めています。3ポイントシュートが得意ですが、それ以外にもドライブやパスができますね。
3番
スモールフォワードのことを指します。アウトサイドもインサイドも、オールラウンドにプレーすることができる選手で、2番や4番が欠場している際には代わりを務めることもできます。
スラムダンクでは、流川楓です。バスケットボールの神様、マイケル・ジョーダンが彼のモデル選手となっていることは有名ですが、マイケル・ジョーダンは2番です。しかし、三井や桜木が欠場した時はその穴を埋めるようにプレーしています。湘北バスケットボール部は選手層が薄いことが作中で課題となっていますが、控え選手では不足してしまう戦力を流川が孤軍奮闘して補っている姿は本編でも見られます。
ちなみに、仙道彰(綾南高校7番)も、基本的には3番を務めています。しかし、作中で1番を任されることもあります。オールラウンダーであることを象徴していますね。
4番
パワーフォワードのことを指します。外角を打つことも求められますが、ミドルレンジやゴール下で活躍できる強靭な体躯を持ち、リバウンド争いも制することができる選手が多いです。
漫画「SLAMDUNK」の主人公、桜木花道はバスケ初心者で入部した湘北高校男子バスケットボール部で、パワーフォワードを務めています。「リバウンドを制するものは、ゲームを制す」という赤木剛憲の言葉に感化され、リバウンドで大活躍します。
元NBAレジェンド、デニス・ロッドマンが桜木花道のモデル選手とされており、同じくハッスルプレーとリバウンドを武器にNBA優勝を成し遂げました。
日本人として初のNBAドラフト1巡目指名を獲得した八村塁選手も、正確無比なミドルシュートを武器にパワーフォワードとして活躍を続けています。
5番
センターのことを指します。チームの中で最も高身長の選手が務めることが多く、主にペイントエリア周辺のインサイドで、ポストプレーを得意とします。
スラムダンクでは、湘北高校男子バスケットボール部キャプテンの赤木剛憲が身長197㎝でセンターを務めています。NBAではセンターを務める選手の身長は「セブンフッター」と言われ、7フィート(2m13㎝)を超える選手が多く、多くのチームがセブンフッターの獲得に奮闘します。
漫画「SLAM DUNK」では、インターハイで名朋工業高校(愛知代表)の1年生、森重寛が登場しますが、彼のモデルは元NBAレジェンド、シャキール・オニール選手(通称:シャック)だと言われています。シャックは身長216㎝、体重147㎏の規格外の選手で、バスケットゴールをダンクで何度も破壊したり、故コービー・ブライアント選手ともコンビでNBA優勝を果たした歴代の名センターです。
※スラムダンクの例えが多すぎますが、ご容赦ください
ポジションから考える、育成年代の指導で大切なこと
小学生を対象としたミニバスケットボールでも、試合で勝利を目指すとなればそれぞれの選手にポジションを与えてプレーさせることもあるかと思います。中学生になれば、180㎝~190㎝を超える身長の選手が出てきて、指導者としてはついつい、インサイドでプレーするように仕向けてしまいがちです。
しかしながら、育成年代の選手たちにはまず、バスケットボールの楽しさに思う存分触れてもらい、将来的にそのプレイヤーがどのような成長曲線を辿っても良いように「オールラウンド」にプレーさせることが非常に大切だと思います。
元NBAプレイヤーの渡邊雄太選手は中学入学当初は身長が160㎝でしたが、そこから1年間に10㎝ずつ伸びていったそうです。身長が伸びれば、チームとしてはインサイドでプレーさせるようなメンバー構成を考えてしまうと思います。しかし、当時の指導者は身長に関わらず外角のシュートからインサイドプレーまで幅広くプレーさせてくれたそうです。
ポジションはあっても、選手個々がやりたいプレーを尊重しつつ、伸び伸びとプレーさせてあげることができれば、選手の可能性を最大限まで伸ばしてあげることができるかもしれませんね。
まとめ
バスケットボールのポジションについて解説させていただきました。
プレイヤーに与えられたポジションを知っておくことは、チームでの役割を自分なりに見つけ出すことができるきっかけにもなりますし、他のメンバーと調和できる材料になります。
また、試合を観戦する際にも、バスケットボールをとことん楽しむために役に立つかと思います。ぜひこのテキストで学び、あなたのバスケットボール活動の参考にしていただければと思います。